出張活弁上映会in鎌倉児童ホーム「ハロー!キートン」
企画展「BOWシリーズの全貌―没後30年 川喜多和子が愛した映画」も終盤に差し掛かった6月17日、年に一度当館で実施している活弁上映会を、今年は「鎌倉児童ホーム」の講堂で開催しました。
1970年代半ば、川喜多和子が率いるフランス映画社は、無声映画時代の大スター「バスター・キートン」作品の連続上映を企画し、日本におけるキートンの再評価を促しました。今回の活弁上映ではキートンの代表作のひとつ『荒武者キートン』(1923年)を取り上げ、是非子どもたちにも見てもらいたいという思いから、鎌倉児童ホームでの出張上映会が実現しました。
当日は梅雨の中休みにあたり、爽やかな風が吹きながらも気温30度の真夏日。午前中から友の会サポーターの方たちにお手伝いいただき、会場の設営を開始しました。パイプ椅子を並べ、黒い画用紙で窓を塞ぎ、プロジェクターを設置する作業も、友の会サポーターや児童ホームのスタッフの方々をはじめ、多くの方々のご協力のもと順調に進みました。当日にチケットを買ってくださる方も多く、多くのお客様にお越しいただきました。親子連れでの来場もあり、児童ホームの子どもたちやスタッフさんも見に来てくれました。活動弁士を務めるのは、当館でもおなじみの澤登翠さんです。活動弁士の第一人者である澤登さんは、子どもたちに喜んでもらえるようにと、蝶ネクタイ姿でご登場です。
「活弁上映は初めての方いらっしゃいますか?」という質問に、多くの手が挙がりました。そこで上映の前には、映画がどんな風に誕生したのか、また活弁で上映していた当時の映画館がどんな様子だったのかを、澤登さんにお話しいただきました。無声映画時代、スクリーンの左側に場面を説明したり、声色を使い分けながら台詞を発する「活動弁士」が、そしてスクリーンと客席の間の低い位置には、映画に合わせて音楽を演奏する「楽士」たちがいた点が、現在の映画館との大きな違いです。
いよいよ映画の上映です。今からちょうど100年前に作られた『荒武者キートン』は、それからさらに約100年前のアメリカが舞台です。1830年頃のアメリカで、当時の最新の技術を誇ったペダルのない自転車や、レールに馬車を乗せたような鉄道など、キートンのコミカルな動きと澤登翠さんの小気味よい語りで、冒頭から会場は笑いに包まれました。「親の敵は幾末代までも敵である」「家に招いた客人は、どんな人間であっても家から出るまではきちんとおもてなしをする」というアメリカ南部の習慣を軸に、犬や帽子、銃といった小道具をさりげなく用いたギャグが続いたかと思えば、後半はCGのない時代に体を張ったアクションの連続。笑いあり、歓声ありの大変な盛り上がりとなりました。
上映の後には、澤登さんに映画を振り返っていただくとともに、バスター・キートンの生い立ちや、チャールズ・チャップリン、ハロルド・ロイドといった世界三大喜劇王といわれるスターたちをご紹介いただきました。小学生くらいのお客様が手を挙げてくれて、「初めてだったけどとても感動した」と嬉しい感想も。当館では初の試みとなった出張活弁上映会は、初めて活弁上映会に参加してくださったお客様も多く、みんなで一緒に映画を楽しむことの素晴らしさを味わえる機会となりました。
ご来場いただいた皆さま、澤登翠さん、鎌倉児童ホームの皆さま、ご協力いただいた関係者の皆さま、本当にありがとうございました。