名優(バイプレイヤー)たちの再発見~企画展振り返り②~
会期中には2つの関連イベントを開催しました。
5月22日には、テレビドラマ/映画『バイプレイヤーズ』を手がけた松居大悟監督にご登壇いただき、「素晴らしき哉《バイプレイヤーズ》!」と題したトークイベントを実施しました。松居監督は午前の『晩菊』の上映も見てくださり、新旧のバイプレイヤーたちの魅力や、監督が考えるスター、『バイプレイヤーズ』のエピソードもたっぷりお話しくださいました。
松居監督のもっとも好きな映画作家が「相米慎二」だということは、監督の作品を思い返してみるととても腑に落ちるものがありました。
今回は松居監督の映画の上映ができなかったのが残念ですが、次回は是非、映画の上映に合わせて再登板をお願いしたいです。東京都の緊急事態宣言で映画館が休館を余儀なくされ、監督の新作『くれなずめ』の公開も一時延期になっていましたが、トーク当日には無事に公開日を迎えており、監督の晴れやかな笑顔が印象的でした。
6月19日には、今回の展示で全面的にご協力いただいた濵田研吾さんをお迎えし、『にっぽんのお婆ぁちゃん』上映後にトークイベント「《脇役本》で味わうバイプレイヤーたちの多彩な魅力」を実施しました。
《脇役本》とは濵田さんの命名によるもので、“脇役”と呼ばれた俳優たちにまつわる書籍全般を指すのですが、その内容は、自叙伝から俳優以外の仕事、愛してやまない趣味まで驚くべき多彩さを誇ります。《脇役本》は存在自体がほとんど知られていないため、濵田さんは古書店を丹念に回り、その過程で多くの《脇役本》を発掘・発見し、自身の著作で紹介してきました。展示では、濵田さんが所有する《脇役本》をお借りし「名優たちの素顔と趣味」と題したコーナーを設けることで、映画だけではわからない名優たちの多面的な魅力をお伝えできたのではないかと思います。
トークではフリーペーパー「名画座かんぺ」発行人であり、池袋の古書店・往来座の店員でもあるのむみちさんをお相手に、お二人が愛してやまないバイプレイヤーや《脇役本》について大いに語っていただきました。終了後には濵田さんのサイン会を実施したり(とっても丁寧なサインが感動的!)、お二人から参加者の皆さまに貴重資料のお土産が配られるなど、企画展のトリを飾るにふさわしい催しになりました。
展示でご紹介した名優たちは、19世紀末に誕生した映画がまだ若いメディアだった時代に映画の魅力を知り、演じることへの情熱と好奇心を終生絶やさなかった人ばかりです。映画の中の彼らを通して私たちもまた、映画の面白さを再発見できたのではないでしょうか。引き続きコロナ禍での開催となりましたが、お越しくださった皆さま、本当にありがとうございました。(胡桃)