『大人の見る繪本 生れてはみたけれど』(1932年) 澤登翠さんによる活弁付き映画上映
『大人の見る繪本 生れてはみたけれど』は、小津安二郎監督の1932年製作のサイレント映画です。(小津さん、この時29歳、笠さんは28歳)。戦前の小津監督のサイレント映画には『落第はしたけれど』、『大学は出たけれど』、『生れてはみたけれど』というタイトルのコメディ作品が3本あります。皆さんも目の前の先行きがわからないときは、ひとまず自分の成し遂げたことを確認し、「~~はやったけれど」、「~~はみたけれど」とつぶやいてみましょう。(片付けはしたけれど、トイレは済ましたけれど、宿題は…机に広げたけれどetc.)。目前の不安な状況や人生の悲哀が、ちょっとだけ見方を変えてユーモラスにみえてくるかもしれません。
さて、 今回は鎌倉市川喜多映画記念館としても初の“弁士付き”上映を開催いたしました。トーキー前の時代には、サイレントの映画に活動弁士さんが映画の内容を語りで聴かせていました。日本では独自の文化として発展し、そのことがあらためて見直された現在でも、サイレント映画上映の催しには、多彩な語り口で様々な映画を楽しませてくれる活動弁士さんが活躍されています。このたび、鎌倉までお越しいただいた澤登翠さんは、弁士の第一人者として、国内をはじめフランス、アメリカほか海外での公演などを通じて「伝統話芸・弁士」の存在を世界にも広め、活躍を続けられています。
(※上映中は暗闇だったので、終映点灯時の一枚)
満場の客席から拍手!! 盛況のうちに幕を閉じました。活弁がはじめてというお客様も多く、皆さま口々に「良かった」、「楽しかった」と感嘆の言葉を仰ってくださいました。大変素晴らしいイベントとなりました。(B.B.)