川喜多長政(1903年〜1981年)
東京生まれ。北京大学で学んだ後、ドイツへ留学。
1928年に東和商事(現在の東宝東和)を設立し、ヨーロッパ映画の輸入を始める。翌年、かしこと結婚。二人でヨーロッパを回り、「巴里祭」「会議は踊る」「民族の祭典」をはじめとする数々の名作映画を配給した。
戦後も、「第三の男」「天井桟敷の人々」「肉体の悪魔」「禁じられた遊び」「フレンチ・カンカン」「居酒屋」やチャップリン主演の映画などを配給し、多くの作品がヒットした。
国際的な文化交流にも力を入れ、1951年のヴェネチア国際映画祭では黒澤明監督「羅生門」の出品に協力し、グランプリを獲得する。以後も妻のかしこと共に、国際映画祭を通じて日本映画を世界に紹介し、世界中の映画人たちと交流を深めた。
川喜多かしこ(1908年〜1993年)
大阪で生まれ、横浜で育つ。
横浜フェリス女学院研究科を卒業後、1929年に東和商事へタイピストとして入社し、長政と結婚。1932年、新婚旅行も兼ね、夫の長政と共にヨーロッパへ映画の買い付けに初めて同行した際に「制服の処女」を気に入り、同作品を日本で公開すると大ヒットをおさめた。これをきっかけに、かしこは作品選定、長政は商談にあたり、仕事上でも長政の良きパートナーとなり、夫婦で数々の名作を日本に紹介した。
外国映画の輸入以外にも、映画フィルムの収集・保存、そして日本映画を海外へ普及させるために尽力した。また、アート・シアター・ギルド(ATG)の設立、さらには岩波ホールの高野悦子氏と共に『エキプ・ド・シネマ』を立ち上げ、国内外の芸術的・実験的な映画を上映した。
カンヌ、ヴェネチア、ベルリンをはじめとする数多くの国際映画祭にも参加し、その温厚な人柄で世界の映画人に親しまれた。