次世代シネマセレクションを開催しました
3月21日(火・祝)・22日(水)の2日間で、次世代シネマセレクションを開催しました。次世代シネマセレクションとは、これからの時代を担う気鋭の若手監督の作品をご紹介する企画です。今回は2022年に公開された森井勇佑監督の『こちらあみ子』を上映しました。
森井監督は、日本映画学校映像学科(現:日本映画大学)を卒業後、映画学校の講師であった長崎俊一監督の『西の魔女が死んだ』(2008)で演出部として映画業界に入り、大森立嗣監督の『日日是好日』(2018)や『タロウのバカ』(2019)などで助監督を務めてこられました。
そして、本作『こちらあみ子』で映画監督デビューを果たされました。21日(火・祝)の午後の上映後には森井監督をお招きし、アフタートークを開催いたしました。
アフタートークでは、学生時代から友人を主演に様々な映像作品を制作されていたことや、『こちらあみ子』の撮影中のエピソード、主演の大沢一菜さんをはじめとした出演者の皆さんとの思い出、そして『こちらあみ子』の作品そのものについてお話を伺いました。
監督のお話の中で特に印象深かったのが、森井監督が子供の目線、あみ子の目線をとても大切されているということです。 『こちらあみ子』の子役のオーディションにおいて、森井監督は床に座って子供の応募者と同じ目線で話を聞いたそうです。そうすることで、応募者の特徴がよく分かり、別の役で出演をお願いすることもあったとおっしゃっていました。さらに、撮影中のエピソードからは役者の皆さん一人一人の個性を大切にしながら撮影されていた様子が伺えました。
本作『こちらあみ子』では主人公・あみ子の周囲の人々が変わっていく様子が描かれています。「周囲の人々だけではなく、あみ子もまた変化していく物語なのでは」と監督に質問しました。その際に監督は、「あみ子には良いか悪いかという『成長』とは違う、『変化』があったのだと思う」とおっしゃっていました。そして、「それは子供のときに抱いた『なぜ怒られているのか分からない』というような、『分からない』の本質を撮りたいという思いから来ている」とおっしゃっていました。
アフタートークの最後にQ&Aの時間を設けました。会場の皆さまよりもっと聞きたいことを監督にご質問いただきました。また、アフタートーク終了後も監督と作品の感想をお話する方が多くいらっしゃいました。
私は初めて『こちらあみ子』を鑑賞した際、何か言葉にしがたい感情を抱きました。あみ子に対してどこかもどかしい気持ちを持ちながらも、あみ子の周囲の人に対して疑問を持っていたためです。イベントを終えて振り返ってみると、私は主人公・あみ子を異質な存在として見ていなかったことに気付きました。無意識に「あみ子と同じ年齢のときの自分はどうしただろう」と、子供の頃の自分の姿を重ねていたのかもしれません。
今回の次世代シネマセレクションは、幅広い世代の皆さまにお楽しみいただきました。冒頭で、「本企画は気鋭の若手監督の作品を紹介する企画」と述べましたが、それと同時に鑑賞された皆さまとともに作品を応援する企画でもあります。森井勇佑監督、主演の大沢一菜さんをはじめとしたキャストの皆さん、スタッフの皆さん、そして鑑賞された皆さま全員と『こちらあみ子』の魅力を共有できたことに感謝いたします。
今後も『こちらあみ子』が様々な劇場で上映され、多くの方に届くことを心より願っております。森井監督、『こちらあみ子』をご鑑賞いただいた皆さま、ありがとうございました。