旧和辻邸 特別公開「暮らしの中の金継ぎ―大脇京子作品展」開催
11月2日(火)から7日(日)にかけて、旧川喜多邸別邸(旧和辻邸)にて「暮らしの中の金継ぎー大脇京子作品展」を開催しました。大脇さんは、鎌倉在住の金継ぎ(きんつぎ)作家です。全国各地から金継ぎ依頼を受注しているほか、金継ぎ教室や漆を用いたワークショップの開催、実用性を備えた美しさを持つ「本漆」を日常に取り入れるライフスタイルの提案など、《金継ぎ》を中心とした幅広い活動をされています。
展覧会会場となった旧和辻邸は、江戸時代後期の民家を改築し、主に茶室や別荘、住居として使用されていた田舎家です。田舎家は、明治から昭和戦前期に茶の湯を趣味とする富裕層の間で好まれ数多く作られていましたが、現存するものは数少なく大変貴重な一例です。このように、日本には古いものを慈しみ、手を加えながら長く使い続ける文化があります。今回の展覧会で取り上げた《金継ぎ》も、その中の一つです。
《金継ぎ》は、「漆」を用いて欠けたり割れたりした陶磁器を接着し、金粉などで接着部分に装飾を施す日本の伝統的な修復技法です。破損に美を見出す修復方法は大変珍しく、海外からも高く評価されています。西洋では、修復の跡を残さない技法が発展しましたが、日本では、修復した傷跡を「景色」と呼び、より一層愛着を持つ美意識が育ったのです。
今回の展覧会では、旧和辻邸で人が生活しているかのように作品を展示していただきました。一番大きな和室では、洋食器を中心にパーティーをしているようなしつらえで、とても華やかでした。
書斎は、大脇さんが金継ぎをする際の作業台を再現していただきました。漆や面相筆、金粉など、なかなか見ることができない金継ぎの道具を直に見ることができる一室です。
茶室では、お茶会を開催しているようなイメージで展示をしていただきました。和辻哲郎の妻・照はお茶を嗜んでおり、照の希望で戦後の改築時に和室が作られたそうです。和辻哲郎・照夫妻 が住んでいた頃の面影を感じる、とても素敵な空間となりました。
5日(金)と7日(日)は、金継ぎワークショップを開催しました。短時間で仕上げるため、漆の代わりに合成接着剤を使用しましたが、金継ぎの工程を体験することができるとても貴重な機会となりました。ご参加の方からは「思い出の品をまた使えるようになって嬉しい!」と喜びの声をいただきました。
今回の展覧会では、大脇さんの作品によって旧和辻邸で人が生活をしているかのような、生き生きとした姿に生まれ変わりました。川喜多長政・かしこ夫妻が映画人を旧和辻邸でおもてなししていた頃は、こんな感じだったのかもしれませんね。鎌倉には、大脇さんのように素敵な作品を作っている方が沢山いらっしゃいます。これからも、精力的に制作活動をしている作家さんをご紹介していければと思っています。どうぞお楽しみに…!
今回も、10月2日(土)、3日(日)の旧和辻邸一般公開に引き続き、友の会サポーターの方々のお力をお借りしながら、開催することができました。お天気に恵まれ、大盛況の6日間となりました。ご来場いただきました皆様、素敵な作品を展示してくださった大脇さんやお手伝いしてくださった大脇さんのスタッフの皆さま、友の会サポーターの方々、本当にありがとうございました。
(TK)