企画展「鎌倉・川喜多邸を訪れた映画人」が終了しました
8月2日から開催してきました、開館15周年記念企画展は、11月24日をもって終了しました。

川喜多長政・かしこ夫妻の足跡を辿りながら、鎌倉の地を訪れた国内外の映画人との交流を紹介する今回の企画展。展示では、1930年代以来の鎌倉文士との交流をはじめ、小津安二郎監督を中心とした鎌倉在住の映画人たちの集いである「鎌倉会」、1953年から始まったフランス映画祭のために来日したジェラール・フィリップ、アラン・ドロン、フランソワ・トリュフォー、ミレーユ・ダルクらフランス映画人との交流、そして夫妻の娘・和子が配給を手がけたベルトルッチ、ヴェンダース、エリセ、ジャームッシュ、アンゲロプロスら世界の映画作家たちが鎌倉を訪れた様子をおさめた写真や、関連映画のポスターなどを紹介しました。


敷地内に建つ別邸は普段は非公開ですが、映画人同士の交流が盛んに行われた場所であることから、皆様に見学いただける機会をより多く設け、築200年以上、2度の移築を経ている趣ある家を味わっていただくことができました。


9月28日には、川喜多長政の評伝「川喜多長政 映画を産業に育てた映画人」の出版を記念して、著者の佐伯知紀さんにご登壇いただきトークイベントを実施しました。


東和商事を設立し、妻・かしこと二人三脚でヨーロッパ映画を輸入・配給した戦前に対し、戦後の長政は、文化・芸術として映画の価値を高めようと奔走したかしこに比べて、その功績がこれまであまり知られてきませんでした。佐伯さんは「川喜多長政 仕事と人」と題した今回のトークで、長政を映画人ではなく「実業家・事業家」と位置づけ、長政が映画業界を形作った上に今の映画界が成立しているという観点から、長政の仕事を読み解いてくださいました。
トークでは、佐伯さんが川喜多映画財団に残る数多くの資料を丹念に調査した中で発見したというインタビューの音声データも披露してくださり、貴重な長政の肉声を聞くことができました。父親の悲劇的な死から、父が愛した中国での戦時中の仕事、戦後の映画産業の基盤作りまで、その仕事を通して「常に時代から逃げなかった」長政という人物が浮かび上がってくる時間となりました。評伝の執筆にあたり、佐伯さんは日本の近代史や政治について研究を重ね、その結果、戦時中に長政を取り巻いていた軍や政治の複雑な事情、そこに関わった歴史上の人物たちが立ち現われきたといいます。当事者が存命だった時代は発言に慎重にならざるを得なかったことも、「歴史」としてフラットに語れるような時代になったことで、新たな段階に入ったと言えるのではないか、そんな言葉が印象的でした。


会期中、映像資料室では展示に関連した映画を16本上映し、様々な切り口から川喜多家と関わりの深い映画作品をご覧いただきました。最終日の11月24日には、友の会会員限定の人気企画「《鎌倉と映画》散策ツアー」を実施しました。ちょうど鎌倉とゆかりの深い映画を上映していたタイミングということもあり、今回は「鎌倉文士と歴史」をテーマに鎌倉の奥座敷を巡りました。
当館から出発して、鎌倉文華館(元神奈川県立近代美術館)を横目に鶴岡八幡宮を通り、川端康成原作・成瀬巳喜男監督『山の音』に登場する魚屋や、源頼朝の墓、鎌倉宮、鈴木清順監督『陽炎座』での幻想的な場面が印象深い護良(もりなが)親王の墓、数々の文学者とのゆかりが深い瑞泉寺、そして目の前に突如広がる永福寺(ようふくじ)跡と、たっぷり2時間半の散策です。秋晴れに恵まれた散策日和のなか、午前と午後で計40名の会員様にご参加いただきました。「紅葉ヶ谷」と呼ばれるエリアだけにもみじや銀杏の紅葉が美しく、友の会サポーターの方たちにもお手伝いいただき、無事に終えることができました。







11月30日(日)より、特別展「サスペンス・ミステリー映画の奇しい世界」を開催します。展示室はガラリと雰囲気を変え、「奇(あや)しさ」を漂わせたポスターたちがズラリと並びます。どうぞお楽しみに!

