斎藤明美さんによる2回のトークイベントが終了しました
10月より開催中の特別展「〈女優〉から〈妻〉へー生誕100年 高峰秀子という生き方」も、いよいよ終盤を迎えています。
今回の展示では、高峰さんと松山善三さんの養女である文筆家の斎藤明美さんに多大なるご協力をいただき、高峰さんご夫妻の貴重なプライベート写真や、愛用の着物、世界各地で集めた小物などをお借りしてご紹介しています。半世紀にわたって見せてきた〈女優〉としての顔、そして俳優活動を減らしながら重点を移していった〈妻〉としての顔を合わせて「高峰秀子」というひとりの人間の生き方が浮かび上がってくることを目指した企画展ですが、斎藤さんのご協力によってその一端をご紹介できたのではないかと思います。
会期中には、2回にわたって斎藤さんにトークイベントにご登壇いただき、1回目は「女優・高峰秀子の半生」を、2回目は「妻・高峰秀子と松山善三」をテーマにお話しいただきました。
高峰さんご夫妻について各地で講演を続けている斎藤さん、今年は生誕100年ということもあり、さらに忙しく全国各地を回られている中での当館のイベントとなりました。チケット発売後すぐに完売してしまう人気ぶりで、1回目のトークの際に多くのお客様に完売のご案内をしなければならず、「もう1回ありますので、その時はできるだけ早くお求めください」とお伝えしたところ、2回目も発売とほぼ同時に完売してしまったほどです。
事前に用意するものを伺ったところ、「ホワイトボード」とのお返事が。斎藤さんは、週刊文春の記者時代に高峰さんと知り合い、以降20年以上にわたる夫妻との交流を経て2009年に養子になられましたが、記者になる以前には高校教諭もされていたそうです。トーク中はほとんど椅子に座ることなく、ホワイトボードにキーワードを書きつつ、堂々たる立ち姿で皆さんをぐいぐいと引き込んでいく様は実に格好良いものでした。
トークでは、子役時代のエピソードや養母との確執、女優としての活躍ぶり、そして松山善三さんとの出会いから、当時はかけ離れたところにいたはずのお二人が結婚に至るまで、高峰さんの決断がいかに大胆なものであったかについて、他人ではなかなか躊躇してしまう際どい表現も盛り込みながら、ご家族ならではの視点でお話しくださいました。その語り口は“芸”の領域に到達しており、甘さと辛さを絶妙に絡めながら、言葉の“間”も含めて、斎藤さんの語り芸を堪能する時間となりました。
イベント後には両日ともにサイン会を行い、皆さま個々に斎藤さんとの会話を楽しんでいらっしゃいました。
斎藤さんはご自身でも『高峰秀子の捨てられない荷物』『高峰秀子の流儀』などのエッセイを数多く上梓されていますが、生前に高峰さんが執筆された書籍の再版や、様々な雑誌に高峰さんが寄せた文章を編纂して新たに出版するなど、高峰さん、松山さんの在りし日の姿やお二人の文章を今の時代に伝えています。
当館の展示でも、高峰さんのエッセイから唯一無二の魅力的な文章を数多く引用し、パネルにして紹介していますが、ミュージアムショップでは数多くの書籍の中から厳選して販売し、情報資料室ではその他の書籍も閲覧できるようにしました。2回目のトークイベント直前には、タイミング良く続々と新たに出版もされ、多くのお客様に新しい本を手に取っていただくことができました。
展示を通して〈女優〉そして〈妻〉としての高峰秀子という生き方に触れ、またその文章の魅力を知り、書籍を手に取っていただくことで高峰さんにさらに興味を持っていただくきっかけになればという展覧会の趣旨が、斎藤さんによって益々活性化されたように感じました。斎藤さん、お忙しい中でのご登壇、まことにありがとうございました。
特別展は年末年始休館(12/29~1/3)を挟んで1月13日まで続きます。1月7日からは最後の関連上映として、鎌倉文士原作の映画『宗方姉妹(むねかたきょうだい)』(大佛次郎原作)『朝の波紋』(高見順原作)を上映します。また高峰さんの生誕100年イベントも引き続き各地で行われますので、高峰秀子さんの魅力を味わい尽くしていただけますと幸いです。