明治・大正文藝シネマ浪漫、本日終了しました!
10月半ばより開催してまいりました特別展「明治・大正文藝シネマ浪漫」、鎌倉・逗子ともゆかりの深い金沢出身の文豪・泉鏡花(1873-1939)の没後80年にちなんで、鏡花が生きた明治から戦前頃に活躍した文豪たちとその映画化作品をご紹介するこの企画も、本日13日をもって無事に終了しました。
本展では、映画と大衆小説の強い結びつきや、教科書などで誰もが知る近代の文学者たち、そして明治になって一気に増加した女性文学者たちなど、様々な面から時代と文学、そして映画の関わりを知っていただけたのではないかと思います。
鏡花の誕生日である11月4日前後には、ご近所の美術館・鏑木清方記念美術館と連携して、鏡花が鎌倉・妙長寺での滞在を小説にした「星あかり」の朗読イベントを、記念館裏にある江戸時代の古民家・旧川喜多邸別邸(旧和辻邸)で開催したり、妙長寺への散策ツアーに出かけたりと、鏡花関連のイベントが集中しましたが、その後も、明治の女性文学者を代表する樋口一葉、与謝野晶子についての講演会や、年末には子供向けに宮沢賢治の作品を映画化したアニメーションの上映会など、この時代の文学と映画に関連したイベントを実施してきました。
少し前になりますが、11月下旬には1週間にわたって、旧川喜多邸別邸(旧和辻邸)で鎌倉在住の画家・ささめやゆきさんの個展も開催しました。
ささめやさんは、特別展内でも泉鏡花の肖像画や、鎌倉文士たちについて絵とエッセイで語った「かまくら文学スケッチ」をご紹介していましたが、版画作品や布を使った作品が、和辻邸の雰囲気とも非常によく合っており、会期中は晴天と荒天という極端な気候となってしまいまいたが、お客様からは大変好評でした。
そして作品だけでなく、毎日会場でにこにこ、飄々と佇むささめやさんご自身のキャラクターも含めて皆さんに愛されているのだということをひしひしと感じた1週間でした。
そして会期の最後、1月11日には、11月の『瀧の白糸』に続き、活動弁士・澤登翠さんにご登場いただき、今度は新派メロドラマから一転、チャンバラ時代劇の名作『鞍馬天狗』(1927)の活弁上映を実施しました。
古い作品ではありますが、かつてチャンバラに心躍らせていたであろう世代の方々が楽しみにしてくださっていたと見えて、チケットは前回以上に早く完売し、客席はいつになく男性のお客様の割合が高い上映会となりました。
澤登さんはいつものことながら、様々なキャラクターの特徴を見事に掴み、お一人だということを忘れてしまう語り口、個人的には特に杉作少年の「おじちゃん!天狗のおじちゃん!」という可愛い声にやられてしまいました。
巷では周防正行監督の最新作『カツベン!!』で、無声映画時代の映画文化に再び注目が集まっているこの時期、明治から戦前という時代の主要な上映形態であった活弁を、まったく異なる2つのジャンルの作品で楽しんでいただくことができ、企画者冥利に尽きました。澤登翠さん、本当にありがとうございました!
というわけで、明治・大正・昭和の映画と文学をめぐるロマンはこれにて終演となりますが、当館では展示替えを挟んで1月18日より、企画展「昭和を彩る女優たち-松竹大船撮影所物語-」を開催いたします。松竹キネマ100周年を迎えるこの年、いまふたたび松竹の美しき女優たちと昭和の世相を振り返ってみませんか?またのご来館、お待ち申し上げております。(胡桃)