企画展「映画の分類学入門」が終了しました
3月12日をもちまして、企画展《映画の分類学入門─ジャンルで読み解くハリウッド》が閉幕となりました。ご来館、ご協力いただいた皆様、誠にありがとうございました。
西部劇やミュージカル映画、サスペンス、ホラーと、ジャンルそれぞれの色調や雰囲気を特徴づける宣伝ポスターの数々を展示し、ご覧いただきました。また、関連作品の上映やトークイベント、上映解説も開催し、たくさんの方にご来場いただきました。感染症対策のため、展示室での「ギャラリートーク」をしばらく「展示解説」という講座形式に変更して行っていましたが、この企画展からは再開し、参加した皆さまと展示資料の前でゆっくりと話をすることができました。熱心に質問をしてくださる方々と話すことで、作品の新たな魅力に気づかされることも多く、とても充実した催しになりました。
「サスペンス映画史」(みすず書房)が昨年に新装復刊した映画研究者の三浦哲哉さん、4月3日発売の「青山真治クロニクルズ」(リトルモア/樋口泰人・責任編集)の編集を担当され、さまざまな書籍や映画パンフレットの編集・執筆にも携わっている月永理絵さんをお招きして、上映後のアフタートークを2回にわたり開催しました。
お二方には以前にも、当館で米仏それぞれの国を代表するサスペンス映画を上映したあとに、その魅力や違いについて「“愛とサスペンス”をめぐって」と題してお話しいただき、大変好評を博しました。今回のアフタートークでは、「サスペンス」に限らず、ほかのジャンルでもきっと面白い展開になるのではないか、参加者を“ジャンルの沼”へと導いてくださるのではないかと企画したものです。当日、お二人は一つの作品から実にたくさんのことを掘り下げてくださいました。普段はこうしたジャンルの作品に馴染みのない方にも良い機会になったのではないでしょうか。
2月11日には、ジョルジュ・サドゥール「世界映画全史」(国書刊行会・全12巻)や「映画理論集成」(フィルムアート社)の翻訳(共訳)など、映画史研究に長年従事されている村山匡一郎さんにお越しいただき、〈ハリウッド映画史とジャンルの盛衰〉と題した講演会を行いました。西部劇やミュージカル映画など、かつて栄華を誇ったハリウッドにおけるスタジオ各社の特色あるジャンルについて、その歴史的経緯を紐解くだけでなく、映画以前から存在したさまざまな芸術分野のなかで、「ジャンル」はそもそもどのような分類があり、どのような発展の道を歩んできたのか、ハリウッド映画の各ジャンルはどのような影響を受けてきたのかを、丁寧にお話しくださいました。今回の企画展の全体像を俯瞰する内容で、ジャンルごとに作品を取り巻く文化や歴史的背景がとてもよく分かりました。
今回の企画展は「ハリウッド映画のジャンルについてより広く深く知っていただくことで、ジャンルの垣根を越えてより一層映画を楽しんでほしい」という意図を持って企画しました。怪奇映画とSF(あるいはファンタジー)との密接なつながりを知ることで、スティーブン・スピルバーグやジェームズ・キャメロン、ギレルモ・デル・トロ監督などをはじめとする映像作家たちの代表作・最新作を鑑賞する際 ──昨今の作品では、幾つものジャンルが複雑に絡み合っているものが一層増えてきています── にも、より楽しみ方が広がるのではないかと思います。
本展の開催にあたり、貴重なポスター資料をご提供くださった方々に、改めて感謝を申し上げます。どうもありがとうございました。