演奏会〈チターで奏でる映画音楽の調べ〉

7月27日(水)に鎌倉在住のチター奏者・内藤敏子さんをお招きして、演奏会〈チターで奏でる映画音楽の調べ〉を開催しました。

チター(ツィター, Zither)は、オーストリア・南ドイツ地方に伝わる民族楽器で、テーブルや膝の上に置いて演奏できる大きさです。原っぱで子どもたちに民謡を聴かせるにも持ち運びやすく、コントラバスのような大きな楽器と違って、高齢になってからも弾き続けられるという利点があり、スイスやオーストリア、ドイツなどで古くから広い世代に親しまれています。この楽器を一躍有名にしたのは、1949年のイギリス映画『第三の男』です。オーソン・ウェルズが演じた「ハリー・ライム」のテーマは、日本でもCMなどに起用され今ではすっかりおなじみの曲となりました。映画音楽を手がけたのは、ウィーン生まれの作曲家・チター奏者アントン・カラス。この映画の大ヒットのおかげで、世界中にチターという楽器が広まって愛好家が増えたといわれています。

内藤敏子さんはスイスでチターを学び、帰国後は日本フィルハーモニー交響楽団など数々のオーケストラに参加。「題名のない音楽会」などにも出演され、現在は日本チター協会会長としてチターの普及・教育に尽力されています。そして、親交のあったアントン・カラス家から『第三の男』に関する未公開資料を託され、2001年には「激動のウィーン 『第三の男』誕生秘話──チター奏者アントン・カラスの生涯」を出版されました。『第三の男』を買い付けて、日本に紹介したのが川喜多夫妻であったご縁から、6年前に当館で『第三の男』のフィルム上映と内藤さんのチター演奏会をセットで開催し、好評を博しました。その後、内藤さんは鎌倉にお住まいを移され、当館にも来館してくださるようになりました。そして今回、企画展〈映画と音楽の素敵な出会いPartⅡ〉の関連イベントとして、内藤さんに再び演奏をお願いすることができました。

↑ 当日演奏された曲目と内藤さんのトーク内容です♪

今回も演奏する曲目やそれが使われた映画に関するエピソードを演奏前にお話しいただき、よく知られた名曲の数々に、いっそうの親しみをもって演奏を聴くことができました。今回初めて演奏される曲もあり、内藤さんも初挑戦の曲を楽しんで演奏されているように感じました。作曲家の方々──古関裕而さんや黛敏郎さんとの逸話はどれも貴重な内容で、映画音楽の巨星たちの人柄の一端に触れた思いがしました。本当に素晴らしい演奏とお話をありがとうございました。(B.B.)