市山尚三さんトークイベント

8月21日(土)は、市山尚三さんをゲストにお招きしトークイベントを開催しました。

市山さんは、10月30日(土)からはじまる東京国際映画祭でプログラミング・ディレクターとして映画祭を開催する側にいる一方、ホウ・シャオシェン監督作品やジャ・ジャンクー監督作品のプロデューサーを務めるなど、映画製作にも携わっていらっしゃいます。今回は、主催する立場と招かれる立場、両方から映画祭と関わっていらっしゃる市山さんに、「映画祭との向き合い方」をテーマに映画祭について詳しくお話しいただきました。

市山さんと映画祭との出会いは、新卒で入社した松竹株式会社から1992年に東京国際映画祭に出向したことから始まりました。アジア映画の特集をした際に、アジア各国から来た多くの新進気鋭の監督たちと出会い、映画祭の重要性を感じたそうです。この時に出会った監督の一人が台湾の映画監督ホウ・シャオシェンでした。ホウ・シャオシェン監督の作品の素晴らしさを会社へ伝えたところ、次回作の出資を松竹が行うことが決まったそうです。その後の作品も含めて、合計3作品を松竹が出資、市山さんがプロデューサーとして関わることになりました。

トークを開催した日の午前中に上映した『帰れない二人』(2018年)のジャ・ジャンクー監督とは、ベルリン国際映画祭で出会ったそうです。若き日のジャ・ジャンクー監督に才能を感じた市山さんは、次回作『プラットホーム』(2000年)の出資を、その頃に勤めていたオフィス北野が行えるように取り計らいました。その後も、映画祭を通して次回作が決まるという、良い循環を生むことができたジャ・ジャンクー監督は、ついに『長江哀歌(エレジー)』(2006年)でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞しました。

このように、映画祭は監督にとって、製作した映画を発表して評価を得るだけでなく、次回作を製作するチャンスをつかむ貴重な場なのです。最近では、多くの映画祭で映画の製作者と出資者をつなげる「企画マーケット」が開催されており、より多くの機会を得られるようになりました。次回作の製作のきっかけを作るだけでなく、映画祭で上映された作品は、海外での評価の高まりや興行にも繋がります。

映画祭はその年のディレクターや審査員によって、評価される作品が変化していくため、どの映画祭に出品するのが良いかをリサーチすることが、プロデューサーである市山さんの仕事の一つでもあったそうです。

映画祭の主催者側として意識していることとして、良い作品を集めるためには批評家や出資者など映画業界の有力者を多く集め、映画監督たちに出品したいと思わせなければならないこと、映画祭の期間中に映画学校を開催し、若手の監督、脚本家、カメラマンなどの育成に力を入れ、素晴らしい作品を作ったときには出品してもらえるようにしていることなどお話をしていただきました。

また、東京フィルメックスのディレクターをしていた時は、必ず日本映画を入れるようにもしていたそうです。そこには、アジア圏の評価の高い映画が数多く上映される中で、日本の映画作家が、自分たちの作品がどのように見えるのかを知り、次の作品へ生かしてほしいという気持ちが込められています。

映画祭に精通する市山さんのお話は、企画展「映画祭のすゝめ」の最後のトークイベントを飾るにふさわしい非常に濃厚な内容で、多くのお客様から「おもしろかった!」とのお声をいただくことができました。

東京国際映画祭が2か月後に迫っている中、鎌倉までお越しいただきお話しくださった市山さん、本当にありがとうございました。

(TK)