魅惑のATGポスター、再び…

現在開催している企画展「日本映画名優(バイプレイヤーズ)列伝」と同時開催で、昨年実施した企画展「映画ポスターの革命~ATG(アート・シアター・ギルド)の挑戦」のアンコール展示を行っています。

ATGは、川喜多かしこらが推進した《日本アート・シアター運動の会》を前身とし、非商業的な芸術映画の公開を目的に1961年に設立されました。世界各地で“ヌーヴェルヴァーグ”が台頭する中、当初は外国映画の配給が中心でしたが、60年代末からは日本映画の製作にも乗り出し、《一千万円映画》と呼ばれる、低予算ながらも自由な映画作りの枠組みを構築、1992年に活動を停止するまでの間、新人作家からベテラン監督に至るまで、大手の映画会社にはない先鋭的な映像表現を追求する場となりました。

ATGはまた、「映画ポスター」においても独自のコンセプトを打ち出し、宣伝という枠を超えて映画ポスターを芸術作品の域にまで高めました。粟津潔、横尾忠則ら当時の新進気鋭のアーティストが手がけたポスターは、高揚した時代を映し出す鏡となり、また映画ポスターを生業としてきたデザイナーたちにとっても、制約の少ないATGでの仕事は、実験的な表現の追求を可能にしてくれたのです。

昨年の展示風景

そんな時代を切り開いたATGの映画ポスターを約90点紹介した昨年の展覧会では、ポスターの人気投票企画「お気に入りの映画ポスターを見つけてみよう!」を実施し、来館者の皆さまにシールを貼っていただく形で、お気に入りの一枚を選んでいただきました。

このたびのアンコール展示は、その人気投票で上位に入ったポスターを中心に、約35点のポスターを展示しています。

ちなみに上位作品はコチラ!( )内はポスターデザイナー名です。

*第1位*『曼陀羅』(林静一)

*第2位*『変奏曲』(細谷巌)

*第3位*『新網走番外地 さいはての流れ者』(横尾忠則)※

*第4位*『薔薇の葬列』(朝倉摂)

*第5位*『津軽じょんがら節』(檜垣紀六)

*第6位*『絞死刑』(檜垣紀六)

*第7位*『青春の殺人者』(小笠原正勝)

*第8位*『卑弥呼(スチル版)』(粟津潔)

*第8位*『転校生』(小笠原正勝/絵:長谷川集平)

*第8位*『尼僧ヨアンナ』(オリジナル版)※

※ATGポスターではありません。

『曼陀羅』のポスターは、ATGの中心的な劇場だった「アートシアター新宿文化」の支配人が独自に制作したものと言われ、非常に豪華な作りになっていて是非間近でご覧いただきたい1枚です。上位10作品はほとんど日本映画が占めているのが特徴的ですが、ATGポスターを支えたデザイナーたちがバランス良く選ばれており、今回の展示でもアーティストから職人デザイナーまで、ATGらしさをぎゅっと詰め込んだ内容になっています。

また、新型コロナウイルスの影響により、会期中の実施は断念した2つのトークイベントを、今回の会期中に振替開催いたします。

・5月5日(水祝)14時~「体験的ATGポスターデザイン論 映画ポスターの熱い時代を生きた男」

 ゲスト:檜垣紀六さん(映画広告図案士)*チケット発売中

・5月15日(土)14時~「1968文化論 50年前の我々はこんなスゴイ映画を見ていた!」

 ゲスト:四方田犬彦さん(映画史・比較文学研究)  *4月17日よりチケット発売開始

アンコール展示では、檜垣紀六さんがデザインを手掛けたATGポスターも数多くご紹介しています。檜垣さんは当時、東宝アート・ビューローに所属し、森繁久彌主演の「社長」シリーズからマカロニウエスタンまで、実に多くの映画のポスターや広告を手掛けていました。トークイベントでは、企業の内部のデザイナーとして、様々な制約ありきでデザイン仕事をこなしてきた檜垣さんが、ATGでの自由な仕事においてどのようなデザインに取り組んだのか、実践的にお話しいただく予定です。

なお、檜垣さんの洋画の仕事に関しては、集大成とも言える大型本「映画広告図案士 檜垣紀六 洋画デザインの軌跡: 題字・ポスター・チラシ・新聞広告 集成」にて詳細に知ることができます。当館でも購入可能ですので、この機会に是非いま一度、映画ポスターにご注目ください。

今回ATG映画の上映はありませんが、四方田犬彦さんのトークイベントでは、時代と密接に結びついたATG作品について、大いに語っていただく予定です。

展示とイベント合わせてお楽しみいただけますと幸いです。(胡桃)

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