「[追悼]俳優 加藤茂雄~鎌倉アカデミアを戦後の原点に」開催

当館では毎年夏に、鎌倉市の平和都市宣言に基づき「戦争と平和」をテーマにした特集上映を開催しています。今年は令和2(2020)年6月14日に94歳で逝去された俳優、加藤茂雄さんを偲び、8月10日から16日にかけて追悼上映を開催しました。

加藤さんの初主演作『浜の記憶』と戦後の原点となった鎌倉アカデミアを取り上げたドキュメンタリー『鎌倉アカデミア 青の時代』を上映しました。また、加藤さんが自らの戦争体験と俳優人生を語った貴重な記録映像も『浜の記憶』と合わせてご覧いただきました。

大正14(1925)年、関東大震災の爪痕が色濃く残る鎌倉に生まれた加藤さんは軍国主義教育を受けて育ちました。成長するにつれ、万歳を叫びながら出征する兵士を見送ることが増えていったそうです。15歳で就職した石川島造船所では海軍軍楽隊の退役軍人によるクラリネットの指導があり、50曲ほどの軍歌を弾くことができるようになったとのことでした。昭和19年、横浜工業高校の夜間部に通っていた時、卒業式で演奏を任された加藤さんは「蛍の光」を演奏する予定でした。しかし、敵国の曲ということで禁止され、代わりに「軍艦マーチ」を演奏するよう命令されました。同世代の卒業生を「軍艦マーチ」で戦地に送ったことを今でも後悔しているとのお話でした。

加藤さんは昭和20(1945)年8月15日を宇都宮で迎えました。敗戦の処理作業を行った後、11月に鎌倉へ戻りました。翌年、昭和21(1946)年5月に開校した鎌倉アカデミア演劇科に入学し、人生の大きな転機を迎えます。卒業後は演劇科の同期生で東宝撮影所の助監督であった廣澤榮氏の誘いで、東宝映画に出演することになり、その後は東宝撮影所の専属俳優として『七人の侍』や『ゴジラ』をはじめとする数えきれないほどの作品に出演されました。70年代以降はテレビ、舞台へと活躍の場を広げ、近年は声優も務めるなど生涯現役で活躍されています。当館にも2度にわたってトークイベントのゲストにお越しいただき、映画俳優としての歩みと鎌倉アカデミアについてお話しいただきました。

最終日の上映後には、『浜の記憶』と『鎌倉アカデミア 青の時代』の監督である大嶋拓さん、『浜の記憶』で共演された宮崎勇希さんと渡辺梓さんによる舞台挨拶を開催しました。撮影現場でのエピソードや昨年の劇場初公開の際に加藤さんと登壇した際の思い出をお話しいただきました。

ご来場の方から『浜の記憶』を見終わった後も加藤さんの姿と鎌倉の何気ない風景が今も心に残り続けていますとの感想をいただきました。これからも加藤さんの思いが映画を通して多くの人に届くことを願っております。(文)

左から宮崎勇希さん、大嶋拓監督、渡辺梓さん