小笠原正勝さんギャラリートーク開催

本日はグラフィックデザイナーの小笠原正勝さんをゲストにお招きして、ギャラリートーク<紙々の深き欲望 ~ポスター絵師たちの飽くなき探求~>を開催いたしました。

当館では、岩波ホールでの公開作品であるエキプ・ド・シネマ(仏語で“映画の仲間”の意)シリーズ(『大樹のうた』『旅芸人の記録』『ファニーとアレクサンデル』『ピロスマニ』)、フランス映画社配給のBOW(ベスト・オブ・ザ・ワールドの略)シリーズ(『ミツバチのささやき』『ブリキの太鼓』『ノスタルジア』『恋恋風塵』『木靴の樹』)のポスターなど、これまでにも折りに触れ小笠原さんの手がけたポスターを企画展に合わせて展示する機会がありました。

小笠原さんの手がけたポスターは、芸術性の高い外国映画の作品だけでなく、市川崑監督の『股旅』、長谷川和彦監督の『青春の殺人者』、鈴木清順監督の『ツィゴイネルワイゼン』などの日本映画に関しても革新的なデザインで数々のアートワークをのこしています。今回は、60年代から80年代にかけて他とは一線を画す手法で芸術映画を製作・配給した日本アート・シアター・ギルド(ATG)作品のポスターに関しても色々とお話を伺いました。

外国映画の場合は、まだ日本語字幕のないフィルム試写から作品の鍵となるエッセンスをつかみとり、ポスターのイメージを作り上げていくそうです。小笠原さんは字幕のないほうがむしろ視覚的なものに集中できるので、ポスター制作にとっては、最初はそのほうが良いこともあると仰っていました。日本映画の場合には、どのタイミングから作品との関わりを持ち始めるか、そのたびごとに異なるそうです。監督によっては原作者に映画化の交渉に行くところから同行を求める方もいて、キャメラマンや助監督ではなくデザイナーと映画の「入口」を一緒に始めるのは、ポスターの宣伝デザインがひとえに映画製作の「出口」に関わるパートだから、でしょうか。(最初と最後の立会人?)

このように製作段階から携わることもあるATG映画のポスターは、さまざまな道のりを経て(併走して)作られていたことが分かり、それらの要素がいかなるカタチでポスターに組み込まれたのかというお話は大変興味深かったです。実際に展示室でポスターを見ながら、参加した皆さんも映画ポスターの見方がより深まったのではないでしょうか。またポスターデザインで気になった作品は、映画のほうも是非ご覧になってみてください。そしてどんな要素がポスターに反映されているのか、再度じっくり眺めにきてくださいね。(B.B.)