「中華電影とその時代-知られざる映画史入門」開催のご報告

9月26日から10月1日にかけて、シネマセレクション「中華電影とその時代-知られざる映画史入門」を開催しました。本特集では、1939年に中国・上海に設立され、川喜多長政が日本側の代表を務めた中華電影股份有限公司(略称「中華電影」)に関連する4作品の上映とトークイベントを実施しました。

「中華電影」は上海を中心に、1939年から1945年の約6年間で、劇場への配給、ニュース映画や文化映画の製作、巡回映写や劇場の運営、そして、中国劇映画の製作を手がけました。今回の特集では、「中華電影」が日本占領下の上海で最初に配給した作品である『木蘭従軍』(製作:1939年/監督:卜萬蒼)や、日本語吹替版として日本で公開したアジア初の長編アニメーション『西遊記 鉄扇公主の巻』(製作:1941年/監督:萬籟鳴、萬古蟾)、中国のスターと李香蘭が共演した清代歴史劇の大作で、中華聯合、満映との合作となった『萬世流芳』(製作:1943年/監督:朱石麟ほか)、阪東妻三郎が主演した大映との合作『狼火は上海に揚る』(製作:1944年/監督:稲垣浩、岳楓)という貴重な4作品を上映しました。

9月30日は『萬世流芳』の上映と、長年に渡って中国映画史の研究をされてきた東京大学教授である刈間文俊先生にご登壇いただき、「映画『萬世流芳』と李香蘭」と題したトークイベントを開催しました。詳細な作品分析から、本作に込められた抗日のメッセージ、李香蘭の登場シーンをもとに分析したアメリカ映画からの多大な影響などをお話しいただきました。

10月1日は『木蘭従軍』の上映と上海戯劇学院映画芸術研究センター教授である石川(セキ・セン)先生による「中華電影とその時代」と題したトークイベントを開催しました。現在の石川先生の事務所は、かつて中華電影の事務所があった場所でもあり、今回のテーマとも繋がる大変興味深い話から始まりました。当時の上海映画界の状況を、時代背景から経済的側面、また、当時の映画人の背景に至るまで、詳細な調査資料をもとに実証的にお話しいただきました。

6日間にわたる映画上映とトークイベントは、当館にとっても川喜多夫妻の足跡を知る大変貴重な機会となりました。今回の開催にあたっては、刈間先生、石川先生、並びに刈間先生の院生の皆様、東京大学・表象文化論、そして、東京国立近代美術館フィルムセンターの多大なる御協力をいただきました。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。今後も当館では、映画史における知られざる側面に光にあてると共に、川喜多夫妻の足跡を辿る特集を検討しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。現在開催中の特別展「映画衣裳デザイナー 黒澤和子の仕事」では、「中華電影関連コーナー」を設置しております。ぜひ特別展とあわせてご覧ください。(文)