おはなし+映画で想像力を働かせながら物語を楽しもう! ~「こどもおはなし映画館」実施報告~

川喜多映画記念館では、夏休みや春休みなどの長期休暇期間を中心に、子ども向けのワークショップやイベントを開催しています。
シナリオの執筆から映画の撮影までを行う夏の「シナリオ教室」や、自分達で描いた絵を通して映画が動く仕組みを知る「ぐるぐるアニメワークショップ」などは毎年恒例の企画として実施していますが、最近はより小さなお子様を対象に、「映画を見る」ことに重点を置いた鑑賞型ワークショップにも力を入れるようになりました。

昨年の暮れに実施した「こども映画館~スノーマンとクリスマス~」では、『スノーマン』の映画鑑賞と、“自分だったらスノーマンとどんなことをして遊びたいか、スノーマンに何を見せてあげたいか”をテーマに絵を描いてもらいました。映画はセリフやナレーションが一切ない情緒的な作品でしたが、繊細で可愛らしい作品の世界観に子どもたちが引き込まれていく姿が印象的でした。その日は雨風が強く、たくさんキャンセルが出てしまうのではないかと気が気ではなかったのですが、みんな色とりどりのレインコートや長靴に身を包んでやってきてくれたので、感謝の気持ちでいっぱいになったのをよく覚えています。

3月30日(木)には、やなせたかしさんの『やさしいライオン』を題材に、絵本の朗読と映画の上映がセットになった「こどもおはなし映画館」を実施しました。朗読を途中で区切り、この後続きがどうなるかを想像してグループで話し合う作業を経て、映画を見るというこのワークショップは、1年前に『こぎつねコンとこだぬきポン』で好評をいただいて以来2度目の開催です。
「アンパンマン」で知られるやなせさんのこの絵本は、優しさと悲しさ、温かさと残酷さが同居した素敵な作品で、それを手塚治虫率いる虫プロダクションが映画化しています。やなせ氏ご本人も参加したという映画は、絵本の物語をさらに具体化し、音楽や歌、ダンスなどの動きを効果的に取り入れて楽しみながら見られる作品で、子どもたちも体を動かしたり一緒に歌を口ずさみながら見てくれました。
最後が悲しいという意見もありましたが、大人が心配したほど子どもたちはショックを受けてはおらず、残酷な中にもブルブルとムクムク(主人公のライオンと犬)が一緒になれたことを喜ぶ気持ちを、子ども心に感じ取ってくれたのかなと思いました。

この鑑賞型ワークショップは、美術教育を目的に鎌倉で活動しているNPO法人「アートとつながる鎌倉」の協力を得て実施しています。美術館にとって教育普及活動は大きな使命のひとつですが、こちらの思惑と子どもたちの反応には時にズレが生じてしまうこともあり、一方的な押し付けになってしまわないかという不安があったことも事実でした。美術教育の現場に多く携わってきた方たちから生の声を聞き、様々な事態を想定して準備しておくことで、やる側も余裕をもって臨むことができるようになりました。
ワークショップはもちろん内容が一番大事なのですが、個性の強い子どもたち一人一人をないがしろにしない体制や、こちらの意図が保護者の方にきちんと伝わることなど、これまで気づかなかった部分を教えてもらっています。

普段はなかなか子ども向けの上映や展示ができないので、その分イベントやワークショップを通して、老若男女問わず親しんでもらえる施設にしていきたいと思います。(胡桃)