年の瀬に振り返る11月、12月~その2~
皆さんこんにちは。久方ぶりに更新した前回の記念館だよりはお読みいただけましたでしょうか。本日、今年最後の記念館だよりの更新をもって年を締めくくるべく、開催中の特別展「世界のクロサワとミフネ」関連のイベントを中心にここ2ヶ月を振り返りたいと思います。
特別展も折り返しを迎え、11月30日(水)には、鎌倉・腰越エリアが舞台となり、実際にロケ撮影も行われた『天国と地獄』の上映に併せて、映画に登場した風景を巡る「ロケ地散策ツアー」を実施しました。これまでに友の会の会員様限定の「ロケ地散策ツアー」は実施しておりましたが、一般向けに参加を募集するかたちでは初めての開催となりました。
この作品は、アメリカの推理小説作家・エド・マクベインの小説『キングの身代金』を原作に、黒澤監督が当時の誘拐罪に対する刑罰の軽さを訴えたサスペンス映画の傑作です。横浜の高台に住むナショナル・シューズの常務・権藤金吾(三船敏郎)の息子を誘拐としようとした犯人が、間違って権藤の運転手の息子を誘拐したことからおこる事件をモチーフに、黒澤監督が「誰をさらおうとも、脅迫は成り立つ」という原作の着眼点を活かした映画ともなっています。誘拐された子どもを監禁していたのが、腰越漁港近くの高台にある別荘地帯という設定もあり、犯人のアジトをつきとめるにあたって鎌倉は大変重要な場所として登場します。運転手である父親と息子が車で犯人の足どりを思い出していく過程は、刑事の捜査と並行して描かれることで、サスペンスを盛り上げる緊張感に満ちた名場面となっており、湘南一帯をよくご存じの方にとっても、とりわけ興味深い場面なのではないでしょうか。
チケット自体が早くに売り切れてしまった今作ですが、ロケ地散策ツアーも早々に定員に達し、皆様の期待の高さが伺えました。
なお、翌日12月1日(木)には、友の会会員様を対象にしたロケ地散策ツアーも実施しました。黒澤明監督が眠る、鎌倉の安養院に墓参した後、腰越周辺のロケ地を巡りました。友の会では、毎年、川喜多夫妻ゆかりの名画を上映する会や、友の会の会員様限定のイベントを開催しています。現在、来年度の友の会会員を募集中ですので、詳しくは当館までお問い合わせください。
12月17日(土)には、『乱』の上映後、本企画展にご協力いただきました映画ポスターのコレクターである槇田寿文さんをお迎えして、映画談話室を行いました。学生時代に黒澤監督の御自宅へ伺い、『天国と地獄』ついてお話をお聞きしたという貴重な経験や、外国版ポスターを集めるきっかけ、また、今回の展示資料の見どころなどを語っていただきました。上映作品である『乱』については、日本以上にヨーロッパをはじめ世界で高い評価を得ていることなどもお話しいただきました。
今年の記念館だよりは、以上で終了とさせていただきます。
来年も引き続き、映画に限らず様々な分野との関わりを大事にしていけたらと思っております。
皆様におかれましても、どうぞ今年以上に記念館に足を運んでいただけますと幸いです。
どうぞ良いお年をお迎えください。(記念館スタッフ一同)