「日本映画の新しいカタチ」を開催いたしました!

卒業式があって、春休み。桜が咲いて、入学式。そんな年度の変わり目。3月25日~27日まで、当記念館では「日本映画の新しいカタチ」と題した特集上映を開催いたしました。

ともに20代、若き新進気鋭のフィルムメーカーとして活躍中のふたりの監督をお呼びして、上映後のアフタートークに登壇していただきました。当記念館では、企画展関連上映とは別個に、シネマセレクションを随時催しておりますが、本企画も作品数としては3作品ほど。作品や作り手の“カオ”の見えるカタチで、鎌倉のこの小さなシアターの和やかな雰囲気の中で上映し、お客様と作り手の方が映画について詳しくお話が出来る場が作りたいと思っておりました。昨年のちょうど今頃は、鎌倉で撮影された作品『サンセットドライブ』を上映いたしました。鎌倉在住の樋本淳監督や出演者の皆さんにも連日お越しいただき、劇中音楽や主題曲の生演奏を行っていただいたり、出演者の方に鎌倉の各地で撮影した時のことなどお話いただいたりしました。

今回は2012年にPFF(ぴあフィルムフェスティバル)でグランプリとジェムストーン賞をW受賞し、その後ベルリンや釜山をはじめ世界10カ国以上の映画祭で上映され、高い評価を得た作品『くじらのまち』の監督である鶴岡慧子さんと、助監督としてスタッフ参加していた竹内里紗さんにお越しいただきました。ふたりはその後も映画作りを続け、2014年にはそれぞれ『過ぐる日のやまねこ』(監督:鶴岡慧子)、『みちていく』(監督:竹内里紗)を製作、翌年には全国の劇場で順次公開されています。今回はその3作品の上映を中心に、25日は竹内監督、26日は鶴岡監督&女優の大島葉子さん、27日には竹内さんと鶴岡さん両監督による上映後のトークイベントを開催し、作品のことや映画作りのキッカケについて、余すところなく語っていただきました。

大島葉子さんと鶴岡慧子監督
竹内里紗監督

ふたりの映画には、「くじら」や「やまねこ」、あるいは「月」の満ち欠けというカタチで、物語の中で重要な役割を果たすシンボルのようなものが幾度か登場します。それは私たちが幼い頃に読み聞きした童話やイソップ物語(「ウサギとカメ」や「北風と太陽」など)のように、動物や自然現象というカタチで登場し、思春期の「焦燥感や戸惑い、悩み」、あるいは「過去の出来事・記憶と結びつくもの」、「もう会えない誰かへの想い」など、目にみえない感情、言葉では形容できないような気持ちと、(そのシンボルが)通じているように感じられました。映画を観る人によって、それは様々な広がりをもって受け止められるでしょうし、それらの寓話的な要素が、それぞれの作品の主題や内容をより豊かにしていたと思います。新しい映画のミリョク、映画のカタチ……世界に登場したばかりの若きフィルムメーカーたちの映画は、今こういう“新しいカタチ”をしているのだ!と思い、今回の企画タイトルを決めたのでした。今回はそういった点も含め、ふたりの監督にいろいろとお話をきくことが出来ました。

 (写真左から)
本企画担当の馬場、竹内さん、鶴岡さん、『くじらのまち』、『みちていく』に出演の山口佐紀子さん(写真提供:ぴあ株式会社PFF事務局)

27日のトークイベントはほぼ満席の状態で、各地からたくさんのお客様が集まってくださった中、あれこれと監督たちにお話を伺っているうち、あっという間にときは過ぎ、お話は一時間半にも及んでしまいました。皆様、長丁場お疲れ様でございました。それにも関わらず、後の質疑応答では、たくさんの鎌倉の地元の方々、あるいは近隣在住の方々(監督とは年齢も大きく異なる方々)が手をあげて質問をしてくださいました。作品を大変楽しんで観てくださり、「現在ではこのような形で新しき映画監督たちが生まれ、こんなような制作過程で映画が作られている」というお話に興味をもち、微笑ましく接してくださいました。その様子をみているだけでも、このような場を鎌倉で設けることができて本当によかったと思いました。ぜひ両監督の今後にご注目ください!また鎌倉でもこのような企画を継続的に続けて行きたいと思います。皆様どうぞよろしくお願いいたします。(B.B.)