かまくら世界映画週間<現代中国篇> アフタートーク@旧川喜多邸別邸(旧和辻邸)庭園

「映画で世界を結ぶ」という川喜多夫妻の理念を引き継ぐ当館の新しい試み、「かまくら世界映画週間」はいかがでしたでしょうか。
今回<現代中国篇>を実施するにあたり、多大なご協力をいただいた上海市から、芸術振興に関わっている方々総勢8名が23日(土)来館されました。

『黒い雪の年』上映前のご挨拶に続き、上映後には旧川喜多邸別邸(旧和辻邸)庭園にて、上海国際映画祭プログラミングアドバイザーの蔡剣平さんをゲストに迎え、現代の中国映画事情を語るアフタートークが開催されました。

5月の気持ち良い快晴にも恵まれ、お客様には庭園に並べた椅子やベンチ、縁側にお座りいただいて、和やかな雰囲気の中、トークが始まりました。
はじめに、聞き役を務めた当館の大場より、1980年代に2回にわたって東京国立近代美術館フィルムセンターで行われた中国映画の特集から、80-90年代にかけての第五世代の監督たちの台頭について導入となる解説がありました。

続いてバトンタッチした蔡さんは、本特集で上映した謝飛監督、鄭大聖監督のお話を中心に、近年の中国ではハリウッド以外の外国映画がなかなか上映されない困難さ、それを受けて上海芸術映画連盟が独自に実践している外国映画を上映する取り組みなどをご紹介くださいました。

参加者の皆さんは、中国国内のスクリーン数、興行収入など、日本とは比較にならない規模の大きさに驚いたりため息をつきながら、蔡さんのお話に耳を傾けていました。
質問コーナーになると、『黒い雪の年』が公開された、天安門事件以後の中国映画の検閲の状況や、現在中国で人気のある日本映画のこと、かつてと比べて中国映画を見る機会が激減した日本での配給状況など、次から次へと質問が飛び出しました。
和辻邸のアットホームな空気と、長年中国映画を熱心に見てこられた皆さんの情熱が見事にかみ合い、本企画が目指した一つの理想的な空間が生まれていました。

肌寒くなってきたところにちょうど5時の鐘が鳴り、トークはお開きとなりました。
終了後も、中国映画についての情報交換に花が咲くなど、ここでの出会いが次に繋がっていくような、幸福な予感を感じた夕暮れでした。(胡桃)