映画女優 高峰秀子

2012年11月1日〜2013年1月27日

昭和4(1929)年、家族と松竹蒲田撮影所の見学に訪れた5歳の少女は、野村芳亭監督の大作「母」のオーディションに合格し、ここに<高峰秀子>が誕生しました。養母の芸名を継いだ彼女は、またたく間に天才子役としての人気を獲得し、<秀坊><秀ちゃん>と親しまれました。

12歳でP.C.L(後の東宝)に移籍、<デコちゃん>の愛称でアイドルの仲間入りを果たしました。名匠・山本嘉次郎によるベストセラー「綴方教室」の映画化と、若き黒澤明が助監督を務めた「馬」で少女スターの地位を確立、戦後も小津安二郎、成瀬巳喜男、木下恵介らの名匠、巨匠の作品に起用され、<子役は大成しない>のジンクスを見事に覆しました。人気絶頂の最中、半年余りのパリ遊学を決行し、帰国後の活躍は演技派女優、大スターとしての地位を揺るぎないものとしました。また、随筆などの分野でも個性あふれる作品を発表し、自伝「わたしの渡世日記」は日本エッセイスト・クラブ賞を受賞しました。女優生活50年を境に現役引退を表明し、文筆活動以外の登場は極力避け、最愛の松山善三監督との日々を大切に守り通しました。2010年12月28日の大女優の訃報は、年明けの1日にもたらされて世間に衝撃を与えました。

本展では、86歳の生涯で50年に及ぶ映画女優の軌跡を、ポスター、写真、資料などでたどるとともに、代表的主演作品も上映いたします。