散策ツアーレポート「衣張山コース」

開催中の特別展「映画監督・是枝裕和のまなざし」の関連イベントとして、3回に分けて実施した「鎌倉と映画」散策ツアー~『海街diary』篇。「海猫食堂コース」「極楽寺コース」に続く第3弾は「衣張山コース」です。友の会会員向け・一般向けと2回実施する予定だったのが、会員向けの日は雨予報のため残念ながら中止となってしまいました。その代わり、12月17日(日)に実施した一般向けの回は、師走らしい寒さながら雲一つない冬晴れとなりました。

10時に記念館前に集合。今回のコースは、「鶴岡八幡宮」から「源頼朝の墓」を遠目に見ながら、「荏柄天神社」→(杉本寺)→(報国寺)→「旧華頂宮邸・庭園」→「衣張山」→「お猿畠の大切岸」→「名越切通」を大町側へ降りて、長勝寺近くで解散という、ひたすら歩き通す内容です。しかも衣張山は登山に近いハイキングということで、ザック姿と慣れている方は山歩き用のストック持参で準備は万端です。

休日ということで、「鶴岡八幡宮」の境内は七五三の家族連れや海外からの観光客などで相当な賑わいでした。一行は東鳥居から「源頼朝の墓」を経て「荏柄天(えがらてん)神社(えがらてんじんじゃ)」(じんしゃ)の境内へ。

ここは天神様が祀られており受験シーズンには合格祈願の参拝者が絶えないそうです。また。横山隆一ら多くの漫画家が河童のレリーフを描いて建立された「絵筆塚」なども見学しました。

この日は他にもウォーキングイベントが開催されていたそうで、途中で多くの観光客や散策・ハイキングの方々とも行き交いながら、鎌倉で最古の寺として知られる「杉本寺」へ。時間の関係で参拝はせず、階段下でのご紹介となりましたが、茅葺屋根の社に祀られているという十一面観音もいつか参拝したいものですね。

一行は続いて「旧華頂宮邸」へ。秋バラが咲き残る見事な庭園を備えた立派な洋館は多くの映画やドラマのロケ地となっており、ご参加の方から「そういえば最近もあのドラマで…」との情報も寄せられました。綺麗に手入れされた庭園は地域のボランティアの方々の手によるものだそうで、次回は是非施設公開の際に建物の中にも入ってみたいです。

「竹の寺」として知られる「報国寺」にも多くの参拝客が訪れていました。秋が暖かかった今年は12月も半ばというのに紅葉もまだ見頃でした。こちらも門前でのご紹介のみとなりましたが、トイレ休憩がてら入口付近の見事な景色をパシャリ。

  

そしていよいよ今回のメインとなる「衣張山」の登山口に到着。それぞれ軍手をつけたりストックを手にしたりとハイキングの準備を整えて、いざ山中へと向かいます。シダが茂り落ち葉に覆われた狭い登山道で、倒木をまたいだりくぐったり、相当にハードな15分間でしたが、歩き慣れている方も多く予想以上にサクサクと進み、全員無事に標高121メートルの山頂に到着。頑張ったご褒美のように、澄み切った青空の下、相模湾と鎌倉の街並み、そして富士山と、見事な絶景が一行を迎えてくれました!

原作では、すずのお気に入りだという山形の景色を見て「鎌倉の風景と似てる」と姉妹が言い合う場面がありますが、映画ではその“似ている”風景として登場するのがこの山頂です。綾瀬はるかさん演じる「シャチ姉」と広瀬すずさんの末妹「すず」が抑えてきた想いを叫ぶ重要なシーンの裏話として、先日のトークイベントでは「スタッフは土砂降りのなか撮影機材を担いで運んだ」と是枝監督がコメントしていました。

絶景を写真に収めたら、今度は下山です。と言っても登ったり降りたりの繰り返しでゴールはまだだいぶ遠い様子…。途中にも富士山を望む絶景ポイントがありました。疲れてきた足も富士山を目にするとシャキっとするのはなぜでしょう。やはり日本にとって偉大な存在ですね。そして急に前方が開けたかと思うと、逗子市に位置する長さ800メートル、高さ約10メートルに及ぶ砂石の断崖「お猿畠の大切岸(おさるばたけのおおきりぎし)」が。標高121メートルの衣張山は、実に色々な顔を見せてくれました。最後は名越の切通へと続く山道を抜け、横須賀線の名越トンネル沿いの道をたどり、線路沿い住宅街を進み、ようやくゴールとなる長勝寺前に13時前に到着!

予定を30分近くオーバーしてしまいましたが、事故も無く、全員無事に”完走”することができました。今回は映画のロケ地のご紹介にとどまらず、鎌倉の歴史や文化、そして自然に触れ合うハイキングと盛り沢山の内容となりました。ご参加くださった皆さま、散策ツアーをサポートしてくださった「友の会サポーター」の皆さま、どうもありがとうございました。今回ご紹介だけに終わってしまったスポットにも、別の機会にぜひ足を伸ばして訪れてみてはいかがでしょうか。

最後に、今回の「衣張山コース」に準備から実施まで携わってくださった、友の会サポーターさん3名の感想をご紹介します。「友の会サポーター制度」はこれからも続きますので、興味を持ってくださった方は是非スタッフまでお声がけください。

「鎌倉と映画」散策ツアーにサポーターとして参加させていただきました。映画『海街 diary』には八幡宮より東のシーンは衣張山しかないので、この山がコースの中心となることは当初から決まっていました。他方、登山が思いのほかハードで時間もかかり、周辺は名所も少なくないため、他の立ち寄り場所の決定は比較的難しく、残念ながらコースから外した所も少なくありません。ツアー当日は天候にも恵まれ、山頂からは、相模湾や雪を抱いた富士山、そして何よりも鎌倉の街が見渡せました。そこまでの皆さんの苦労も霧散したのではないでしょうか。参加者の皆さんには、至らぬ点も多々ある私の拙い案内に耳を傾けて頂き、感謝いたします。(N)

この散策で回った杉本寺、旧華頂宮邸、衣張山、大切岸等々、サポーターとして引率する立場にありながら私には全く初めての体験でした。杉本寺が鎌倉最古の寺であることや、豪華な華頂宮邸が数々の映画やドラマの舞台に登場していたこと、衣張山の見晴らしなど、このツアーがなければ知ることがなかったかもしれないと思うと、とても思い出に残る散策ツアーになりました。下見も含めて、この1か月半の間に準備のためコースを4回も歩きましたが、その際にかつて「鎌倉事件」と言われる歴史的大事件が鶴岡八幡宮のすぐそばで起こったことも知ることができました。

それにしても、鎌倉の観光客の大半は八幡宮と小町通り、大仏近辺に集中して大混雑していることを考えると、もう少し分散して歴史の町を歩きながら歴史を楽しんでもいいのではないかと思わされます。一緒に散策していただいた皆さま、ありがとうございました。(I)

「鎌倉の街が主役」と是枝監督も書いていた『海街diary』がテーマの散策ツアーでしたが、今回のコースは映画と直接関係するのは衣張山の山頂のみ、しかもかなり本格的なハイキングコースを参加者の皆さんに事故なく楽しんでいただけるか、と気がかりでしたが、実施してみると、映画好きというだけでなく、原作漫画のファンの方、ハイキングとして楽しみたいという親子連れ、趣味が地層研究というところから興味を持った方など、様々な方から色々なお話を聞くことができました。

またしおり作成に際して、通い慣れている鎌倉の歴史や文化を自分がいかに知らなかったか思い知るとともに、そうした沢山の魅力ある場所のことを学ぶ機会にもなったので、今後に生かしたいと感じました。色々とご迷惑もおかけし拙い説明になりましたが、何よりこのハードなコースを全員事故なく無事に完走できて本当に良かったです。(S)