友の会限定《鎌倉と映画》散策ツアー~川喜多和子編~

5月24日、開催中の企画展「BOWシリーズの全貌―没後30年 川喜多和子が愛した映画」の関連イベントとして、友の会会員限定の散策ツアーを実施しました。

前日は季節外れの寒さのなか一日中しとしと雨が降り続きましたが、当日はよく晴れて絶好の散策日和となりました。

今回の展示は、川喜多長政・かしこの長女である和子の仕事を初めて取り上げた企画です。散策ツアーに出る前には、旧川喜多邸別邸(旧和辻邸)の広間にて、川喜多長政の生い立ちから東和での映画配給の仕事、和子が生まれてどのように育っていったのかなど、「川喜多家の3人」について解説しました。

東和商事にて、新婚当時の川喜多長政、かしこ
1956年のカンヌ国際映画祭、日本映画スタンドにて川喜多長政、和子、かしこ

企画展の冒頭で、1993年に急逝した和子の葬儀で大島渚監督が読んだ弔辞を紹介していますが、この弔辞は和子の生涯のみならず、川喜多長政・かしこの業績についても伝えています。弔辞の内容を全員で共有するため、まず参加者の皆さんで弔辞を声に出して読んだ後、解説に入りました。

その後、近くの尼寺・英勝寺にある川喜多家のお墓参りをしました。お墓への道のりは山登りに等しい険しさです。10分近くの間、黙々と登り続けて、ようやく到着。お参りが済み、墓石を見ていた参加者の方から一言「今日は長政さんの命日なんですね」。旧和辻邸での解説でも長政が1981年5月24日に亡くなったとお伝えしていたにもかかわらず、今日がその日であることをすっかり失念していました。

偶然にも命日の墓参となったことを喜びつつ、散策ツアーは終了しました。旧和辻邸には気持ちの良い風が吹き抜け、山登りでは汗をにじませつつ、新緑を愛でながらの心地よいイベントとなりました。今回は8名の方にご参加いただきました。皆さま、ありがとうございました。

1980年、ヴェネチア国際映画祭で家族揃っての1枚

なお、旧川喜多邸別邸(旧和辻邸)はかつて、ヴィム・ヴェンダース監督が小津安二郎監督にオマージュを捧げたドキュメンタリー映画『東京画』の中で、俳優・笠智衆にインタビューを行った場所でもあります。撮影は1983年4月に行われ、BOWシリーズの一作として1989年に公開されました。『東京画』は企画展関連作として5月30日(火)~6月4日(日)に当館にて上映致します。画面のところどころに、撮影に立ち会っていた川喜多和子の姿が映り込んでいます。映画を楽しみつつ、和子の姿も是非探してみてください。

東京画写真
『東京画』の中で旧川喜多邸別邸(旧和辻邸)にてインタビューを受ける笠智衆